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満天の星 番外編 ~妹、梨華の恋~ 出会い②

Author: 紅城真琴
last update Last Updated: 2025-07-02 20:46:42

就任式の夜、私は自宅に帰らずの愛さんの店に向かった。

「「こんばんは」」

美穂と、信吾と、拓也と私。

幼稚園から一緒の仲間で、中学の頃からは週の半分を一緒に過ごしている友達。

「どうぞ」

出されたのはノンアルのカクテルと、ウーロン茶。

さすがにアルコールは出さない愛さん。

その辺はわきまえている。

飲んでる振りをして、私達は店に馴染んでいった。

その時、

「こんばんは」

爽やかなイケメンが入ってきた。

んん?

「あら、海人さん。お久しぶりね」

「ああ。久しぶり」

やばい。

そーっと逃げようとしたけれど、

「梨華どうしたの?」

愛さんに声をかけられて動きが止まってしまった。

美穂も拓也達も、山口先生には気づいていない。

「君たち、若いねえ。まさか、高校生?」

山口先生が訊いてきた。

「まさか、働いてますよ。社会人」

美穂が言い、私達も頷いた。

とりあえず、山口先生は納得した感じ。

その後、山口先生はハイテンションでご機嫌にお酒を飲み色んな話をした。

学校の先生になりたくて、1浪したけれどやっと今日なれたと教えてくれた。

素敵だな。

こんな風に人生を描けたらどんなにいいだろう。

私の人生はもうボロボロだから。

「君も働いてるの?」

山口先生が私に声をかけた。

「私は大学生。英文科です。通訳になりたいんです」

半分本当で、半分嘘。

何だろうこの気持ち。

ちょっとだけ罪の意識を感じながら、それでも私は山口先生との会話が楽しかった。

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